筆者は以前「キャンピングカーの車検とは?購入やDIYの前に知っておきたい車検のルール」という記事を書きました。日本のナンバー制度や車検についての基本的なことをまとめました。
今回は上級編として、さらに踏み込んだ車検の話や、実際にDIYを行う上での注意点を紹介していきます。
まずは前回の記事「キャンピングカーの車検とは?購入やDIYの前に知っておきたい車検のルール」のおさらいをしておきましょう。
▼前回の記事はこちら
こちらの記事では主にキャンピングカー、バン、ワゴンといった車種(用途区分)の違いや、それによって変わってくる車検の制度について紹介しました。
キャンピングカーとして8ナンバーを取得するには細かな構造要件を満たす必要があり、そのためにはハイエースやキャラバンのハイルーフ仕様といった特定の車種をベースにします。
それ以外の車種をベースにしてDIYで8ナンバーを取得するのは非常に難しいため、今回は8ナンバー以外のバンライフ仕様車の話を中心に進めていきます。
後部座席を取り外してフルフラットな板張りにするDIY。バンライフ仕様車でよく見かけるDIYですが、実はそのままでは車検を通すことができません。
メーカーが発売する際に車の乗車定員が設定されており、その乗車定員分の座席とシートベルトが設置されてないと違法改造となってしまいます。そのため、乗車定員を変更するようなDIYを行った場合には構造変更の手続きを行う必要があります。
例えば、もとの乗車定員が6名で、3名分の後部座席を撤去するDIYをした場合、乗車定員を6名から3名に変更しました、という手続きをするということです。
この手続きを行うことでその車の乗車定員は3名ということになり、後部座席を取り外した状態で車検を通すことが可能になります。
当然ですが構造変更によって乗車定員を3名にしたあとは、4名以上で乗車することはできません。また乗車できるのは座席とシートベルトの残っている最前列部分だけなので、後部のベッドで1人寝ている状態で運転することなどは道路交通法違反になるので注意が必要です。
先ほど紹介したのは4ナンバー(貨物自動車)であるバンの場合。5ナンバー(乗用車)の場合はもっと複雑になります。
乗用車、つまり人を乗せることが目的である5ナンバーの車では、運転席の後ろの空間の50%以上を乗車スペースが占めていないといけないという決まりがあります。このため、後部座席を完全に撤去することはできません。
5ナンバーの車をベースにしてフルフラットにDIYするためには、乗車定員の変更だけではなく乗用車から貨物車への登録の変更が必要になります。
車の内装については、万が一の車両火災の場合などに備えて、燃えにくい「難燃性素材」でなければならないと決められています。
▼詳細ソース
https://www.mlit.go.jp/common/000190452.pdf
この点で「荷室部分を木で覆うDIYをして車検に通るのか?」と不安に思われるかもしれませんが、特に問題ありません。
理由は大きく2つ。まず上記リンクの一番下、4.2.に記載がありますが、厚さ「厚さ3mm以上の木製の板は難燃材としてみなす」と記載されています。そして、上記リンクの一番上「1.適用範囲」に「運転者室及び客室の内装材料に適用する」と記載されています。
つまりこの規定は乗車スペースに関しての決まりであり、荷室部分には適用されないということです。
以前は車検の際にはすべてのパーツをノーマルの状態に戻し、メーカーが販売しているときの状態でなければ車検に受からないという時代もありました。
しかし、最近ではある程度のカスタマイズが許容されてきており、メーカー純正品以外のサードパーティー製のパーツでも、つけたままの状態で車検を通すことができるようになりました。
車両の重量に関しては車検証に記載のある重量から±50kgまでは許容範囲として構造変更をすることなく車検を通すことができます。荷室を覆った木材も車検の際に取り外す必要はありません。
またこの範囲内であれば、例えばベッドなども布団やマットレスは下ろさなければなりませんが、ベッドのフレームを車体に固定しているのであれば「荷物を積み込むための棚」という名目でそのまま車検を通すことも可能です。
バンライフ仕様にDIYした車の車検に関して、車検に通るか通らないか以前に、車検を受け入れてもらえないというケースが存在します。ただし、これは陸運支局の自動車検査所で断られるということではなく、ディーラーや整備工場に持ち込んだ際に断られるというパターンです。
陸運支局で受ける車検では、法律で定められた検査項目において基準を充しているかどうかがチェックされます。逆に言えば、検査項目以外の他の部分に不具合があっても、合格になってしまうということです。
いっぽう正規ディーラーでの車検では販売した車を安心・安全に長く乗り続けられるように、車検を通すだけではなく車全体の点検整備、メンテナンスを行なっています。
交換が必要な際に使用されるパーツもすべて正規品で、メーカーが最も安全性を保障できる「本来あるべき姿」に戻すことがディーラー車検の目的と言えます。
そのため改造車や正規品以外の部品を使用している車は、車検の受け入れを断られてしまうことがあるようです。これまで車の車検や整備点検はディーラーに任せていたというような人は、特に注意が必要です。
ただしディーラーで車検の受け入れを断られたからといって、その車が車検に通らないということではありません。民間の車検専門店などでは柔軟に対応してくれるところも多くあります。
もちろん、自分で陸運支局に車を持ち込んでユーザー車検を受けるというのもひとつの選択肢です。貨物用のバンであれば毎年受けることになる車検の費用を安く抑えることができるというメリットもあるので、DIYを機にユーザー車検に切り替えるのもおすすめです。
ここまでDIYに関する車検の話をしてきましたが、ひとつ見落としがちなのが自動車保険との関係です。
構造変更をした際には車検証の記載内容も変わってきます。そういった改造をした際には保険会社への申告が必要になります。また±50kg以内の重量変更も、構造変更が不要というのは車検に関しての都合であり、保険会社との取り決めには関係がないので、本来は保険会社への申告が必要えです。
保険会社としてはできるだけ保険金を支払いたくないのが本音です。事故を起こした車両が保険会社に無申告で改造されていて、その改造が事故の原因のひとつだとすると最悪の場合、保険金が下りない可能性もあります。
車のDIYに関しては車検や法律が関わってくるため、非常に複雑です。インターネットで調べても古い情報がそのまま残っていることもあり、人によって言っていることが違うこともよくあります。
バンライフ仕様車のDIYで車検に関して不安を感じた際は、陸運支局で確認をするのが確実です。
事前に電話で予約を取り、営業日である平日の検査業務が終わった後の時間に直接訪問することになります。担当者によるとは思いますが、親切に対応してもらえます。
無事車検に通ることはもちろんですが、安心・安全にバンライフを楽しむためにも、専門家に相談しながらDIYに挑戦しましょう。
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