日本初のバンライフドキュメンタリー「THE ROAD TO ME」監督シー・チェンハンさんの挑戦と制作秘話
日本初のバンライフドキュメンタリー「THE ROAD TO ME」監督シー・チェンハンさんの挑戦と制作秘話

日本初のバンライフドキュメンタリー「THE ROAD TO ME」監督シー・チェンハンさんの挑戦と制作秘話

2024年12月12日
インタビュー

大阪府出身、DIYした軽キャンピングカーで日本一周中のフリーランスライター、旅インフルエンサー。SNSではリアルタイムのキャンピングカー旅の様子を発信中。夢はバンライフで世界一周をすること。

日本初のバンライフをテーマにしたドキュメンタリー映画『THE ROAD TO ME』が公開されました。


バンライフというライフスタイルを通じて、自由を求め、自分らしい生き方を追い求める人々の挑戦と成長を描いたドキュメンタリー作品で、人生の旅路に勇気をもらえるような一本です。


今回は、映画を手がけたシー・チェンハン監督に、制作に込めた想いや裏側、そして2024年11月17日に開催されたドライブインシアターの様子について伺いました。

日本初のバンライフドキュメンタリー映画制作に挑戦

 シー・チェンハンさんについて教えてください

イベントでトークをするシー・チェンハンさん


台湾出身で、東京を拠点に映像ディレクターとして活動しています。

台湾で物理学を専攻し、卒業後1年半かけて30カ国を旅する中で映像制作に惹かれ、フルタイムで映像制作に取り組むことを決意しました。


仕事では、アメリカのイベント制作企業でハイブランドの動画を制作したり、観光系動画のディレクションなども行っています。

元々8年前に日本へ移住する前は世界旅行をしていたこともあり、旅を終えたら拠点を持ちながら自由に旅をしたいと思い、バンライフがそんな私のライフスタイルに合うと考えました。


2020年に日産キャラバンのハイルーフを購入し、1年半かけて車中泊仕様にDIYしました。週末バンライフを楽しんでいます。

『THE ROAD TO ME』はどんな映画ですか?

THE ROAD TO ME のワンシーン


「THE ROAD TO ME」は、日本初のバンライフ文化をテーマにしたドキュメンタリーです。バンライフの魅力と、その生活の真実を深く掘り下げたこの映画は、車中泊の自由で豊かなライフスタイルをリアルに描いています。


また、この映画は日本のバンライフ文化を記録するだけでなく、「勇気」をテーマにした作品でもあります。

主人公の宮本芽依さんは、大学生という立場ながら就職活動をせず、自作のキャンピングカーでデジタルノマドとして生きる選択をしました。


映画では、彼女がその決断に伴う葛藤や挑戦を通して成長していく様子や、バンライフをしている人々にインタビューし、その背景にある思いやストーリーを追いかけました。

日本の美しい自然とともに、彼らの“人生の旅路”を映し出しています。

どうして「THE ROAD TO ME」を制作しようと決めたのですか?



宮本さんと出会ったのは2022年初頭でした。

その頃、私は日本のバンライフ文化に興味を持っており、ドキュメンタリー映画を作りたいという構想がありました。


特に、アメリカの「ノマドランド」という映画に影響を受けました。リーマンショックで仕事と家を失った女性が、現代のノマドとして車上生活を送る姿を通して、アメリカ社会の知られざる一面を描き出す作品です。


ノマドランド日本版のようなドキュメンタリー映画を作りたいと思っていたところ、そのタイミングで宮本さんに出会い、彼女もちょうどバンライフドキュメンタリーを作りたいと思っていたこともあり、プロジェクトがスタートしました。

この映画を通して挑戦する「勇気」を与えたい

制作時に意識したことや気づきを教えてください


宮本メイさんがバンライファー・ノスケさんにインタビューする様子


最初に考えていたストーリーと完成した映画は、かなり違います。

当初は主人公である宮本さんの人生に焦点を当てる予定でしたが、撮影を進める中で、宮本さんの人生を通して日本のバンライフ文化全体を描く方がいいのではと気づきました。

その結果、他のバンライファーのインタビューも取り入れる形にシフトしました。


映画制作を通して海外と比較した日本とバンライフ文化のユニークさに気がつきました。

まず、車のサイズが大きく違います。日本では軽自動車を使ったコンパクトなバンライフが多いのに対し、海外、特にアメリカでは大型車両が主流です。


また、日本では趣味としてバンライフを楽しむ人が多いのに対し、海外では経済的理由で車中泊を選ぶ人も少なくありません。

映画制作ではどんな困難がありましたか?

初めてのドキュメンタリー制作だったので、納得のいくストーリーを見つけるのが大変でした。


実は制作途中に参加した「Tokyo Docs」というドキュメンタリーのイベントで、海外のプロデューサーから「主人公は人柄がいいけれど、ドラマ性が弱い」などとネガティブなフィードバックをいただいたときは、制作が一時止まるほど悩み、自分がどんな作品を撮りたいのかわからなくなるほどでした。


それでも試行錯誤を重ね、今の形に仕上げることができました。

 お気に入りのシーンについて教えてください


羊蹄山と宮本メイさんのキャンピングカー


私が最も気に入っているシーンは、宮本さんが青森から車で北海道へ向かい、羊蹄山に向かって大声で叫ぶシーンです。


快晴の空の下で彼女が思いっきり声を上げた瞬間に、バンライフの自由さや開放感が凝縮されていると感じられます。

この映画を通して伝えたいことは何ですか?

バンライファーのruiさんと宮本メイさん

自分の心に従い、好きなことを続けていれば、「必ず価値観の合う人々に出会える」ということを伝えたいです。


周りの友達が就職活動をする中、宮本さんはキャンピングカーの制作をしたり就職以外の選択肢を模索している時、孤独や寂しさを感じました。しかし、自分の信じる道を突き進むことで、宮本さんの生き方に共感して活動を応援してくれる仲間に出会えることができました。


私も学校を休学して、世界の旅に出た経験があり、周りの友達と違う道に進むことに不安を感じましたが、最初に訪れたインドで仕事や学校を辞めて旅をしている人たちにたくさん出会うことができたんです。


宮本さんや私のように、周囲と違う道を選ぶには勇気が必要だと感じています。しかし、その選択が新たな出会いや自己発見につながる可能性があると思います。


この映画を見た人が、自分自身の生き方について改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。

ドライブインシアターで2年半の集大成を上映

上映会はいかがでしたか?


ドライブインシアター会場に並ぶキャンピングカー


今回、私たちはイオンシネマと提携し、イオンモール与野の屋上でドライブインシアターを開催しました。約30台の車が参加し、60名-70名の参加者にご来場いただきました。


映画上映前にはバンライファーやインフルエンサー、キャンピングカー関連商品メーカーが自由に交流できる時間を設けました。


三味線奏者の澤田一咲さん

さらに、日本の雰囲気を加えるため、今回は特別に澤田一咲さんを映画のオープニング演奏者としてお招きしました。日本で唯一の三味線演奏専用に設計されたキャンピングカーで素敵な三味線の音色を披露していただきました。


                                     映画上映後のトークライブをする様子


映画終了後には、キャンピングカーや車中泊スポットのレンタルプラットフォームを運営するCarstayの代表取締役である宮下さんをお迎えし、撮影の裏話やバンライフについてお話ししました。


この映画は日本のバンライフ文化を世界に紹介する目的で作られました。そこでバンライフに興味を持つ方々とこの映画を一緒に観たら、素敵な空間になるのではないかと思い、ドライブインシアターという形で上映することにしました。

映画制作や上映会を終えた今の心境を教えてください


まずは、映画の制作を通して多くのバンライファーと友達になれたことが嬉しかったです。台湾から日本に移住して来たため友達は多くありませんでしたが、撮影や宮本さんを通じてたくさんのバンライフが好きな方々と出会うことができ、気のあう仲間に恵まれました。


また、映画制作を通して宮本さんには凄く影響を受けました。

経験がない中で初めての映画制作をやり遂げただけでなく、宮本さんの提案でクラウドファンディングにも初挑戦しました。多くのご支援をいただくことができて本当に感謝しています。


私はこれまで何でも一人でやってきたのに対して、宮本さんは多くの友達を持ち、自分のやりたいことがあれば仲間を誘って一緒に取り組みます。


今回のイベントを通じて、時には人に頼ったり、協力することの大切さを学びました。

2年半の撮影期間を支えてくれた宮本さんとそのご家族、そして応援してくださった皆様に本当に感謝しています。

今後の展望を教えてください


「THE ROAD TO ME」を通して世界中の観客に日本の独特なキャンピングカー文化を広めたいと思っています。皆様のご支援のおかげで、今後は約20個の国際映画祭への応募を予定しており、その中で選ばれることを目指しています。


水中撮影をするシー・チェンハンさん


また、私は趣味でスキューバダイビングをしているのですが、今後は水中での本格的な映像制作にも挑戦してみたいです。特に私はクジラが好きなので、世界中のさまざまな海に潜ってクジラの映像などを撮りたいと思っています。

応援してくださった方々に何か伝えたいことはありますか?

「THE ROAD TO ME」は、私にとっても日本のバンライフ文化を知り、多くの仲間と出会う素晴らしい旅でもありました。

クラウドファンディングから上映会まで、たくさんの方々の温かい支えを感じながら、この映画を完成させることができました。


この映画が、皆さんにとって新しい生き方や挑戦を考えるきっかけになることを願っています。


映像制作にご協力いただいた皆様、応援してくださった皆様に本当に感謝しています。本当にありがとうございました。

お話を伺った人: シー・チェンハンさん


シー・チェンハン(Hsu Chenhan) は台湾出身。日本在住歴8年の東京を拠点に活動する日本在住の映像ディレクター。これまでに多くのハイブランドの動画を制作し、ディレクションを手掛けた観光系動画では受賞作品を生み出してきた。また、自作キャンピングカーでバンライフを楽しむバンライファーとしても活動中。日本独自のバンライフ文化に魅了され、その模様を追った自身初の長編ドキュメンタリー 『THE ROAD TO ME』を監督。 


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大阪府出身、DIYした軽キャンピングカーで日本一周中のフリーランスライター、旅インフルエンサー。SNSではリアルタイムのキャンピングカー旅の様子を発信中。夢はバンライフで世界一周をすること。

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