銭湯や大衆浴場で見かけることが多いサウナは、いつの間にかスパ・ホテル・カフェとあらゆる場所で目にする機会が増えました。2021年には「ととのう」が新語・流行語大賞にノミネートされ、注目度の高さがうかがえます。
Carstayでもサウナカーの予約をいただく機会が増えてきました。
サウナが日常に溶け込むほど流行している最中、並々ならぬサウナ愛で人生を180度以上変えた「CHILL DOG」(チルドッグ)の二人と出逢いました。
お話を伺うと、仕事を辞めて、DIYしたキャンピングカーにテントサウナを乗せ、日本一周をしているとのこと。
何がそのような行動に掻き立てているのか、彼ら自身の言葉で話してもらいました。
CHILL DOGはやとさん(以下:はやとさん):僕たちは静岡県富士宮市出身で、元消防士の僕と、元営業をしていたしょうごの2人組で「CHILL DOG」と名乗っています。現在は、投げ銭とスポンサー様からの協賛金を頂きながら、全都道府県でテントサウナイベントを実施し日本一周をしています。
日本一周を始めるきっかけとなったのは、20代後半を迎えるにつれて感じていた不安からでした。
社会人になってから、毎晩のように飲み歩く生活。
それはそれで楽しかったけれど、同じことを繰り返している毎日に対して「このままでいいのか」と感じていました。
大人たちが「こんなことをしたかった」と後悔の言葉を口にする姿から、これから先の自分たちが見えてしまったようで、このままの生活を続けることが怖くなりました。
そんな時、先輩に誘われサウナの聖地「しきじ」を訪れ、楽しみ方を学び、人生で初めてととのいました。
自分との対話の究極系であるサウナに完全に魅了されたんです。
さらに、テントサウナの聖地「サウナ天竜」を訪れ、自然と一体になれる感覚に病みつきになり、気がついたらテントサウナを購入していました。
それからは、週末は海や川でテントサウナを楽しむ生活を続けていたんですが、次第にアイディアが浮かんできました。
「全国でテントサウナを行ったら、面白いんじゃないか!?」
もともと、漠然と旅をしたいと思っていました。そして、ただ旅をするのではなく、何か自分達を表せるようなコンテンツを探していたんですよね。
サウナの師匠と出会い、施設にあるサウナとは一味違った「テントサウナ術」を学んだことで、それが僕たちの武器になりました。
日本一周をする友人が多かったので、旅=日本一周は自然とイメージができたものの、僕たちは睡眠が取れる快適な旅にしたいですし、テントサウナの持ち運びをしなくてはいけない制約もあります。
必然的に、旅のテーマは「テントサウナを持って、クルマで日本一周をする」に決まりました。
CHILL DOGしょうごさん(以下:しょうごさん):家族や職場への説得に時間はかかりませんでした。
サウナが本当に好きなこと、そして自分たちでサウナを作りたいことを伝えていました。
日本一周をして、全国のサウナを肌で感じた後に、何を思い、作り上げるのか。
それを考えただけで、自分の人生にワクワクするんです。
はやとさん:対照的に、僕は納得してもらうまでに時間がかかりました。
でも、どれだけ周囲から反対されても、サウナは日本を元気にできる可能性があること、そして日本一周をすることで自分の叶えたい生き方を実現できることを強く信じていました。
消防士として働いていた中で、健康寿命の大切さや、自己免疫を戻すことがいかに重要であるかを現場で気付かされました。
サウナには人間を健康にする効果があります。
僕は、サウナを全国に広めることは、日本を元気にすることだと信じています。
そしてもう一つ。仕事に縛られずに、行きたい場所で、会いたい人に会える自由が欲しかったんです。だから、夢を諦めたくなかったんです。
はやとさん:SNSで「DIYした車で日本一周をしたい」と発信したところ、面識が全くなかったキャンピングカービルダーの
松尾颯さんから連絡がありました。
瞬く間に意気投合し、一緒に車をDIYをすることになりました。
もともと幼稚園バスだったトヨタのハイエースを約1ヶ月半かけてDIYしていきました。
短期間での製作は非常に大変でしたが、構想変更や車検の取得も自分達で行い、完成させました。
しょうごさん:「機能面は考えず、とにかくサウナ風であること」が製作テーマでした。
内装には松を用いて、サウナ室内をイメージした格子状の壁を作りました。そのうえで、最低限の収納と寝るスペースの確保をしています。
基本的に、僕たちはイベントスケジュールに合わせて全国を移動しているので、自由に寝泊まりできる場所が必要です。だから、自分たちの車は「寝る、物を収納する、テントサウナ用具を運ぶための手段の一つ」として捉えています。
実は、よくSNSで見るような「ハッチバックを開けて、大自然の中でコーヒーを飲む」ことはしたことがありません。
僕たちの1日の過ごし方は、観光地を巡ることはせず、イベント開催地まで移動して動画編集、イベントの企画書作成をすることが多いです。
もちろん、その地域で出逢った人から食事や寝床をお世話になることもあります。
そのような活動が日常に溶け込んでいるので、仕事とプライベートの境目が曖昧になりました。
しょうごさん:二人で描いていた「自分たちでサウナを作りたい」未来が、誰かと一緒に作る未来に変わったことでしょうか。
人見知りな僕たちでも、サウナの中では「冷たい」「熱い」という気持ちを、自然と誰かに共有し、話ができます。
気がつけば、今までに600人ほどの人と共にサウナに入り、語り合ってきました。
出逢いの入口はサウナでしたが、地域の人がサウナと合うご飯、いわゆる"サ飯"(さめし)を提供してくれたり、地域企業がシェアハウスを作るきっかけになったり。
様々なものが掛け合わさり、変化する起爆剤になったと感じています。
はやとさん:家に対しての価値観も変わりました。
旅を通じて、僕たちにとっての家は「寝るための場所」であることに気づきました。
だから、この日本一周が終わって拠点を持つときに、動かない「家」を保有する、ではなく車でいいと感じるようになりました。
僕たちにとっては、好きなサウナに入り、戻ってきたらどこでも寝られる生活は幸せです。
しょうごさん:日本一周を終えた時に、お世話になった人を全員集めて、最大規模のイベントを作りたいです。
そこで全国サ飯グランプリもしたいですね。
はやとさん:そして、日本一周を経て見つけた、自分たちの理想のサウナを作るためのクラウドファンディングにも挑戦しようと思っています。
実は、作りたい場所や協力者探しは、今も旅を続けながら行なっています。
しょうごさん:とはいえ、これからも旅の中でたくさんの人と出逢い、夢の形が変わっていくのかもしれません。
最終的には「サウナは要らない」と言っているかもしれませんし、変化の流れに身を任せたいです。
「サウナに入っていれば、なんとかなる」が僕たちの合言葉なので、不安は一切なく、ワクワクしかないです。
CHILL DOGのお二人と初めてお会いしたのは、私が東北へ旅をした2022年の7月末。
当時は「人見知りなんです」と多くを語られはされなかったものの、「すごい意思決定をされた方々。絶対に何かある」と思っていました。
話を伺えば伺うほど、日本一周やバンライフ、サウナでつながる出逢いにより、お二人の価値観が変わっていったことを感じました。
旅の終着点で何が描かれるのか、心から楽しみです。
サウナの可能性に魅せられ、仕事を辞め、DIYしたキャンピングカーにテントサウナを乗せ日本一周をする2人組「CHILL DOG 」。
全国の様々な場所でテントサウナイベントを企画・開催され、今までに約600人へ「ととのい」を提供しています。
Instagramアカウントはこちら。日々更新される、サウナと共に過ごすお二人の様子をぜひチェックしてみてくださいね。