この数年、ハイエースや軽バンなどのクルマを車中泊仕様にし、バンライフをスタートするご夫婦が少しずつ増えてきています。
今回インタビューをした「Bohemian Life(ボヘミアンライフ)」のタクマさん・ノリコさんご夫婦も、10ヶ月間かけてマイクロバスを家のようにDIYし、日本を旅されているそう。
元々は東京で働いていたご夫婦が、なぜ仕事を辞め、バスでバンライフを始めたのでしょうか。
理想のクルマができるまでのお話や、バスでの暮らし方、旅の思い出のエピソードなどについてお話を伺いました。
ノリコさん:ノリコです。千葉県出身で、年齢は32歳です。保育の短大を卒業後、保育士と幼稚園の先生として10年間働いていました。
バンライフを始めてからは、愛知県の野外保育のバイトをしたこともあります。私は「パーマカルチャー」に興味があるのですが、自然の中での子育てに興味があり、そこは山を園庭として、日常の中で子どもたちが火起こしや、畑をするような保育園だったので、とても学びになりました。
タクマさん:タクマです。愛知県生まれで、現在35歳です。幼少期から学生のころまでずっと、サッカーをやってきました。
高校卒業後はアメリカの大学に進学し、大学でもサッカーを続けていたのですが、チームメイトの南米出身の友達にすすめられて、南米でプロを目指すことにしました。
ウルグアイでサッカーの3部リーグに受かったのですが、提示された給料が4万円。ウルグアイの物価は安くはなく、生活していくには無理な金額でした。そこで23歳の時にサッカーを辞めて、南米バックパッカー旅を始めることにしたんです。
バックパッカー旅では、「せっかくだから手作りのイカダでアマゾン川を渡ろう」と思い、イカダを作ることにしました。そのイカダを作っている時に、アマゾン川沿いの田舎町で日本人を見つけたんです。
その日本人の方に声をかけたら仲良くなり、一緒に2ヶ月かけてペルーからブラジルの国境を超え、アマゾン川をくだりました。
バックパッカー旅を終えて日本に帰国後は、自分の旅の体験を伝えたいという思いから映像に興味を持ち、東京で映像制作の仕事を始めました。
東京で働き始めて、8年がたったころに、ノリちゃんと出会ったんです。
※パーマカルチャーは、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた言葉。人と自然が共存する社会をつくるためのデザイン手法のこと
タクマさん:2018年にノリちゃんとタイ旅行に行った時、偶然バックパッカー旅の際にアマゾンで出会った旅人と再会したんです。
ノリコさん:彼に「バンライフって知ってる?」と聞かれました。当時、日本ではまだバンライフという言葉は浸透していなかったですが、おもしろそうだなと興味を持ちました。
そんな中、新型コロナが流行して仕事が制限されたタイミングで「今だ」と感じて、2021年に仕事を辞めてバンライフを始めることにしました。
タクマさん:大人2人でも家と変わりなく快適に暮らせるくらい、大きなクルマがよかったんです。アメ車も検討しましたが、メンテナンス費用がかかることもあり、日本車がいいなと。結果、マイクロバスになりました。
車両は20年落ち、走行距離3万kmの「トヨタ コースター」です。
ノリコさん:バスのテーマはホビットハウス(小人の家)。インテリアは角がなく、丸みがあるのが特徴です。
タクマさん:壁や天井は断熱材を入れて、天井には曲がる合板を使用し、その上からローラーで珪藻土(けいそうど)を塗って仕上げました。車内のお気に入りポイントは、シンクと薪ストーブです。
タクマさん:薪ストーブは、電気を使うよりも火の暖かさや廃材を使って火を起こすという暮らしをしたいと思い設置しました。近所の薪ストーブ屋さんで購入したのですが、そこの店主もすごく良くしてくださったんです。どうやって設置したら安全なのか、いろいろと相談に乗ってもらいました。
ノリコさん:写真のシンクは施工の合間に夜なべして作りました。シンクのデザインのテーマは「地球遊び」。細かく割ったタイルを1枚1枚手で張りつけたので大変でしたが、とても気に入っています。これも岐阜県多治見市のタイル屋さんに協力をいただき完成させた、思い出の詰まった一点ものです。
タクマ:DIYはトータルで10ヶ月間、毎日8時間くらい作業をしました。DIYは初めての経験だったので、大変すぎて修行している感じでしたが、終わってみると本当に楽しかったです!
ずっと「早く旅に出ていろいろな人に会いたい」と思っていましたが、クルマを作っている間に、本当にさまざまな方との出会いがあり、完成前の時点ですでに「旅をしているような気分」を味わうことができました。
ノリコ:食事は9割自炊をしています。できるだけ体が喜ぶものを摂るよう心がけています。野草をいただくことも多く、フキ、竹の子、山椒、イタドリなど意外といろいろ食べられるものがあります。
バスにはコンポストをのせているんです。瓶に生ゴミをためておいて、たまったら水や油などと一緒に土に入れ混ぜ、日中は太陽の日が当たるところに出しています。シソやハーブを育てていて、そのハーブでリンスも作るんですよ!
旅の中で出会う方々から学んだことを暮らしに取り入れて、自然の恵みをいただきながら暮らしています。
タクマ:旅に出発してすぐに、アマゾン川でイカダ下りをした相方と高知で合流して、クルマで四万十川沿いを上りました。四万十川の下流の方では人も少なく、自然が豊か。天の川を端から端まで見ることができるんです。地球のまるさを感じるような場所でした。
タクマ:また、岐阜県郡上市の湧き水汲み場で出会った方が、TVチャンピオン「サバイバル野人王選手権」で優勝された、縄文野人&火起師の大西琢也さんです。
度重なる不思議なご縁から、お家での夕食にご招待してくださりました。それから約1ヶ月生活を共にし、自然との向き合い方を見せてくださりました。火起こしの方法や、薪割り、野草の活用方法など、暮らしのひとつひとつが新鮮で興味深いものだったんです。
ノリコ:観光地を巡るというよりは、出会った人たちの人生や生活を見させてもらうような、そんな旅が好きなんです。
ノリコ:妊婦としてバンライフをする上で1番大変なことは、トイレが近くなることですね。それ以外は、街で暮らすより良い環境だと思います。ストレスフリーで、ゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができました。
忙しく働いていると、自分の体の声に耳を傾けることを忘れがちですが、この生活をしていると時間がたくさんあるので、体と赤ちゃんと会話しやすい環境でしたね。
ノリコ:ありがとうございます!名前は「ニコ」と名付けました。元気な女の子です。
出産当日はバスでゆっくり陣痛を待ちました。遠方から母も駆けつけてくれ、一緒に車中泊をしたり、川辺でゆったりしたり。母、私、赤ちゃんの3世代で、特別な時間を過ごすことができました。
タクマとは四六時中一緒にいるのですが、出産にも立ち会ってもらいました。産む瞬間だけでなく、その前からずっと見守ってくれていたので、お産を赤ちゃんと二人三脚で迎えることができ、絆がより一層深まったと思います。
そんな体験ができたのも、この移動する家、キャンピングバスがあったおかげです。
産後は拠点でゆっくりする予定ですが、ニコのようすに合わせて、工夫しながらバンライフを再開していき、1歳くらいになったら北海道にでもいきたいですね。
これからも、できるだけ風を感じて太陽を浴び、自然と調和する暮らしを続けていきたいです。
「Bohemian Life」タクマさん(35)とノリコさん(32)。
コロナ禍をきっかけに仕事を辞め、「ホビットハウス」をテーマにマイクロバスをDIYし、2022年からバンライフを開始する。6月に第一子の女の子「ニコちゃん」が誕生し、現在バンライフはお休み中です。
▼Bohemian Lifeさんのキャンピングバスは、愛知県にてCarstayでレンタルが可能。
気になる方は、ぜひお問い合わせしてみてくださいね。(※予約前に一度、お問い合わせください)
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